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最高裁判所第三小法廷 昭和37年(あ)1572号 決定

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人寺坂吉郎、同岩田広一の上告趣意は、判例違反をも主張するが、引用の各判例は、いづれも、私文書偽造罪の成否に関するものであって、本件の如き有価証券偽造罪に関する事案には適切でないから、論旨はその前提を欠き、その余は単なる法令違反の主張であって、上告適法の理由とならない。(たとえ代理人が商法五〇六条に基づく商行為の代理権として、本人の営業に関し手形振出の権限を有し、かつその相続人から右手形振出に対する同意を得ていた場合であっても、既に営業を廃止した後死亡した者の名義を用いて約束手形を振出す行為は、刑法一六二条一項の有価証券偽造罪にあたると解すべきである。)

また、記録を調べても、刑訴法四一一条を適用すべきものとは認められない。

よって、同四一四条、三八六条一項三号により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 石坂修一 裁判官 五鬼上堅磐 裁判官 横田正俊 裁判官 柏原語六 裁判官 田中二郎)

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